雑記 もくじarrow  home   [print]

circle印画紙デジタルプリント検証

印画紙プリントとは

【 デジカメデータを DPE ショップでプリント 】 でフジフィルム系のチェーン店の店頭のデータ受付機を使って発注する EXIF つき JPEG データの印画紙プリントを取り上げた。繰返しになるが、印画紙プリントはインクジェットのプリントとは別物。未チェックのかたは、ぜひ試してほしい。

印画紙のデジタルプリントは、従来のアナログカメラで撮影したフィルムを現像プリントするのに使う種類の印画紙を使って、インクジェットのようにインクを吹き付けるのではなく、レーザーをデジタルで制御して直接印画紙に感光させてプリントするシステムである。(あちこちでちょっとずつ拾った知識の記憶からまとめているので、間違った記述があるかもしれません。正確を期すかたは Google 検索あるいは専門資料などできちんと調べてください。)

現在、かぶら屋(わたし)の関心は Painter とその周辺であり、デジタルカメラとその画像の扱いはそれに付随する二次的なものであるが、デジカメプリントとして受けつけてもらえるデータは、主に JPEG、たいてい TIFF もあり、なので、Painter データを小さいサイズで美麗に出力するには最強、という意味で Painter ユーザーにとっても他のグラフィックツールユーザーにとっても、このプリントサービスはかなり有効利用できるものだと思う。

発注と受け取り

今回、以前にも使ったフジフィルム系の「パレットプラザ」のデジタルプリントに加え、DPE ショップから外注するコダックのデジカメプリントと、DPE の店内に設置されたコニカの機械による「100 年プリント」でも、複数の JPEG ファイルからなるセットのプリントを頼み、それを比較してみた。(他にもプリントサービスはあるし、同じメーカーのプリントでも違う種類のものがある可能性もあることを念頭に置いた上で、参考にしてください。)

発注にあたっては、フジフィルムの店では店頭の発注用の機械を使用し、機械が吐き出す受付メモをカウンターで渡すときに「補正なし」を指定。コダックのプリントの外注もメモリカード(今回は余っているスマートメディア)を渡す際に、「すべて 1 枚ずつ、補正なし」をしつこく指定。店内設置のコニカの機械によるプリントでは、スマートメディアを渡して同じく「1 枚ずつ、補正なし」を指定。指定サイズは「ハガキ」。これはわたしはハガキくらいにしかプリントした写真を使わないから、というのと、けっこう大きいわりに料金が安めなので。

ちなみに料金は、コニカが「ハガキサイズ」1 枚 50 円、フジが「ハガキサイズ」40 円、コダックは「M サイズ」で 50 円+外注料金一律 500 円上乗せ。全部徒歩圏内の店で発注したので、郵送料などはなし。

ここで「補正なし」をお願いしとかないと、暗い背景に小さめに明るいものがあるようなイメージが、全体に明るく処理されるので、パソコン上で作成あるいはレタッチして明るさやコントラストを調整したファイルは、基本的に「画像補正なし」で発注する必要があるようだ。デジタルだから「そのまま」の出力かと思って何も指定しなかった初回の結果は、明るくなっていて驚いた。

結果としてできあがってきたプリントは、どのプリントもメーカー純正の印画紙を使ったものだった(コニカは KONIKA MINOLTA Long Life 100、フジは FUJICOLOR Ever Beauty Paper for LASER、コダックは Kodak Royal Paper)。コダックのみ、サイズは「ハガキ」と言って頼んだけど、そういう種類がなく、「M サイズ」というものが返ってきて、長さがハガキよりかなり短かかった。(受けつけた店の説明不足で、コダックのせいではないと思われる。) その代わりにもとの画像と縦横比は合っていて、長辺の両側がカットされていない。

各メーカーの特徴

複数のメーカーのサービスによるプリントをいっしょに並べてみると、かなり違った結果になっているのがはっきりわかる。

まとめてスキャン・クリックで拡大 とりあえず、今回比較するプリントをスキャナにいっしょに並べてスキャンしてみた。スキャナは HP psc 2150 (プリンタ複合機 / CCD センサー)で、画質調整なし(HP は「標準画質)では輪郭強調をかけるので、ここんとこ重要)、他の設定デフォルトの 1200 dpi。下のサンプルはこの大きいファイルから切り出したもの。右はスキャン全体の縮小図。上から コニカフジコダック。コダックだけ葉書きサイズではなく、少し小さい。

縮小画像からも明らかだが、メーカーによって色の傾向が違い、コニカは「深め」で少し赤が強い色、フジは明るめでパッと見たときにキレイに見える印象、コダックは色合いはひじょうに素直だが色が淡泊な感じに仕上がっている。(右の縮小画像をクリックすると、もう少し大きいサンプルを表示。)

サンプル比較 ― 300dpi

以下、スキャンの一部を切り出して比較。まずは 1200dpi スキャンの 25% 縮小。(ということは 300dpi になるが、IrfanView の Lanczos フィルターによる縮小なので、最初から 300dpi でスキャンした画像より縮小で細部の最適化が行われて、いわゆるドットが見えにくい画像になっていると思う。)

ここで dpi の説明をちょっと加えておくと、元のプリントの解像度が 300dpi のものをスキャンして、これを 300dpi 相当のスキャンデータを表示すると、ハガキサイズのプリントはハガキサイズで画面上に表示されるというわけではない。画面の解像度がたとえば 72dpi であれば原寸の 4 倍以上の大きさで表示される。画面で実寸で表示されるのは、画面の解像度と同じ dpi でスキャンされたデータである。300dpi プリントと 300dpi スキャンの関係は、プリント出力のデータがあまり抜け落ちることなくスキャンデータとして取り込める、という関係である。

言い換えると、表示画面の解像度で 300dpi が選べるようになるまでは、300dpi の出力をデータを失わずに画面上で実寸で表示することはできない。

Konica デジタルラボ

まず、コニカ の店内プリント。これは近所の DPE ショップでプリントしたもの。ちょっと前まで、デジタルデータをそのままプリントできる店内機(デジタルラボ)がなかったので、入った機械は現時点では最新であると思われる。

色が少し赤に傾くが、それがデジタルカメラ画像のデータを、アナログフィルムの画像の印象に近づけているように思える。違和感はない。また、少し深め(単に暗いとか濃いというより)の色で、光量がじゅうぶんあるところで見たときに、ひじょうに魅力的に見える。

Fuji フロンティア

パレットプラザの フジ のプリント。葉書きサイズのプリントを普通に目で見たときは、なんとなく「細かいところが溶けてる」という程度だが、高解像度でスキャンすると「これはどうみてもやりすぎ」というレベルのノイズリダクション処理がかかっていることがわかる。輪郭部は残っているが、細かい濃淡はのっぺり。これが FinePix 向けの最適化っていうやつかぁ。(ヘンに納得。)

色は「パッと見、きれい」路線。明るめで鮮やか。

その後、ウェブ上での記事などを読んで、フジの機械にも「設定」(個別の画像の補正以前の機械の基本設定)があるので、店ごとに違う可能性もあるということを知りました。しかし、少なくともデフォルトに近い設定ではこういう傾向があるようです。(2005/04/15)

Kodac 外注デジタルプリント

上のコニカのプリントを頼んだのと同じ店で、コダック のデジタルプリントを外注。色はこれがいちばん正確で素直。上のコニカのほうが、なんか深みがあるあたりに惹かれるが、正直な出力という点ではこっち。

サンプル比較 ― 1200dpi

次に、デジタルプリントの仕組みまでなんとなく見える、1200dpi 等倍の切出し。

Konica スキャン等倍

コニカ。今回比較したプリントのなかでは、この種類だけドットが見える。肉眼ではふつうの倍率 2、3 倍の拡大鏡を使ってもはっきり見えない程度のドットではあるが、好みによってはマイナス点。しかし、解像感は非常に高い。ウェブ上の資料によると、このプリント出力は 300dpi。(印画紙プリントはドットが溶けて目立たないので、インクジェットの dpi の数字とは違うレベルで当たり前、らしい。)

Fuji スキャン等倍

フジ。ノイズ除去処理だけでなく、黄色を多めに明るくして、同時に色から濁りを除去している感じ。データによっては明るい部分の階調がなくなる。ディテールがなくなりすぎなのがここでも確認できるが、このために細部の多いデータはなんとなく「寝ぼけた」プリントになる。ドットは見えないがこれも 300dpi。

Kodac スキャン等倍

コダック。左の白点はスキャン時のゴミ。ドットがなくてディテールも残っているという点、これが基本にあるべきマジメな方向。コダックだけ現在のところ 250dpi らしい。

どのプリントサンプルでもそうだが、明度変化の大きいところに光の輻輳のような像が現れている。レーザーで印画紙にプリントする仕組みの特性かもしれない。

スキャン等倍比較用 オリジナルデータ

これが、今回使った JPEG ファイル 元データ の一部を、ドットが残るようにして 400% に拡大した画像。元データは Panasonic DMC-FZ1 というデジタルカメラ ROM 初期状態(ソフトウェア Ver. 1.03)で撮影した 1600 x 1200 pixels の画像を Paint Shop Pro 8 で少しトーンカーブを調整したもの。

この元データが、プリント出力とスキャン入力という、色データのずれが起きる作業を 2 回経て、上のサンプル画像になっていることを考えると、印画紙デジタルプリントはかなり忠実な出力をしているのがわかる。ただし、フジのディテールなくなりすぎは、注意する必要がある。

スキャン等倍比較用 インクジェット出力

比較参考として、Hewlett-Packard psc 2150 の 4 色インク(黒インクカセットを中間色のインクカセットと交換すると、6 色インクにもできる)+ KONIKA Photolike QP というインクジェット用の用紙の出力。4 色インクでドットははっきり見えるが、このインクのほうがメリハリがあると感じる人も多い。ドットが見えるといっても、肉眼では拡大鏡を使わないと見えないレベル。

比較レビュー

今回、この 3 種類を同じ画像で比較した、暫定的な評価としては、フジ のは細部が消えすぎなのが、わたしにとっては大きな欠点。コダック は元データに忠実なのがいい。が、Painter などで描いた絵を知人に見せたい、といった用途を考えると、ハガキというサイズ(絵ハガキの体裁で自作絵を送りつけることができる)がないのが痛い。コニカ は赤が強い暗めの出力であるが、出力結果だけを見るとこれがかなり魅力的なバランス。明るい部分がフジのように飛ばずにメリハリがある。色はデータへの忠実性という点ではいまひとつ、なのだが、これが艶と奥行きのある色合いを生んでいるので、結果だけを取れば現在のベストは コニカ

印画紙プリントによるオリジナルハガキ

【 デジカメデータを DPE ショップでプリント 】 でも触れているが、家庭用のインクジェットプリンタでカラー画像を出力すると、昔と較べればびっくりするほどキレイな出力になってはいるのだが、あれこれ不満が残る。

  1. 専用紙に高級感がなく、艶ありタイプはベタベタして手触りが悪く、指がこすれたときに軋み音がする(これが個人的に大嫌い)。薄っぺらくて、いかにも「プリンタ専用の用紙」。
  2. 新開発インクでも印画紙の色の深みと艶には及ばない。
  3. 質感と手触りを優先して普通紙を使うと、発色が悪かったり、細部がつぶれたり。プリンタのほうで薄っぺらい紙しか使えないこともある。
  4. インクジェット専用マット仕上げの紙は中途半端で、一見した質感はまともだが、ペンでメッセージを書き足そうとするとインクがのらないとか、コーティングがはげるとか、すごく不便。

こういった不満をかかえていろいろ試行錯誤して行き詰まっていたが、印画紙のデジタルプリントの出力を一度見たらインクジェットとはレベルの違う世界だったので、インクジェットに「細部までくっきりした色に艶のある印刷」を期待するのはやめた。(もちろん、ふだんの文書印刷はインクジェットで。Hewlett-Packard インクジェットプリンタの白黒文書プリントは最高。)

印画紙プリントはサイズが大きくなると値段が高いので、このへんは「やっぱりインクジェットで」という選択肢もやっぱり有効だが、できるだけ高い品質でハガキサイズで出力したい、というとき、ハガキサイズの印画紙プリントは、コストも 1 枚 40 円から 50 円で、現在のところいちばん効率がいいのではないか。

印画紙プリントは「艶あり(グロス)」用紙しか選べない。また、ふつうの写真プリントと同じで、紙はふつうのハガキよりは薄い。そのまま使おうとすると薄すぎるだけでなく、純正の用紙を使っていることを示すプリント用紙裏側のマークがじゃまになる。だから、手作業で別の紙で裏打ちするか、ある程度の枚数を手数料がかかり単価も高い「ハガキプリント」として発注するかする必要がある。

印画紙プリントは発色が美しいだけでなく、耐久性も高い(「100 年プリント」とか名前がついている)のも、自分専用で終わらないプリントとしてポイントが高い。ちょっとでも気になった人は実際にプリントを発注して、ぜひ自分の目で確認を。

デジタルデータをどういう形で受けつけているかは、一度その店で実際に話を聞いてみたり発注してみないとわからないかもしれない。パレットプラザの機械受付は EXIF データのあるファイルでないと認識しない。メモリーカードを丸ごと渡してプリント依頼する場合このへんどうなのかは、まだチェックしていない。(念のために EXIF のあるデジカメデータにペーストして保存したものしか、まだ持ち込んだことがない。)

この方法で、文字とレイアウトまで自分で作った年賀状などを作成することも可能なはず。ただし、長辺がわがトリミングされること、短編もほんの少しトリミングされること、を計算に入れてレイアウトを組む必要がある。あらかじめサンプルのプリントを頼んで確認してから、まとまった枚数を発注するべきである。(このへんは、どんな作業でも共通ですが。)

くれぐれも「画質補正なし」を指定すること。また、印画紙デジタルプリントのカラースペースは基本的に RGB なので、レタッチやオリジナル画像貼り込みの場合、Photoshop などで不用意なカラーマネジメントをしないよう注意。

[ 2005/04/15 追記 ]

近所のコニカのプリントの店のハガキサイズの値段が 1 枚 100 円(税別)になっていた。また、画質が変化して、クセのない元データにより忠実なもの、すなわち上の例でのコダックのような画質になった。

以前のプリントも今回のプリントも純正の用紙(KONICA MINOLTA Long Life 100)であり、裏面の刻印も N が 4 つ並んでいて、これは「画質無補正」のことであるようなので、これについても同じ。機械が変わったのか、メーカーから提供しているデフォルト設定のようなもの(ファームウェアのようなもの?)が変わったのか、あるいは店が独自に設定を変えたのかわからない。拡大したときに見えるドットについては以前と同じ。いずれにしても悪くないが、同じメーカー系列でもプリント結果には幅があることがわかった。

最初にこの記事を書いたころにくらべると、オンラインで注文を受けるショップがかなり増えたようだ。ハガキサイズのプリントを扱っているところも多い。かなり安い値段設定のショップもある。プリントの内容(印画紙プリントであることの確認、使っている機種、できれば使っている用紙も)を確認して、試しに発注してみる価値はありそう。私製ハガキを裏面に貼り付けてくれるサービスも、以前より安いものが出てきた。

EXIF データの扱いについては明記されているのを見かけない。EXIF のカラーマネジメントは現時点ではプリント時に使っていないようだが、かえってそのほうが安全だと思う。試し刷りをしてこちらで色校正したほうが確実。

2005/04/15 - 最近の動向追加。
2003/12/11 - 最初のバージョン確定版。

(Last Modified: 2005/04/15)

    もどるreturn  home