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TV チューナー内蔵液晶ディスプレイでデュアルモニター

この記事は当初、2005/08/10 日付の「雑記」として公開しましたが、長くなったので別ファイルとしました。

なりゆきの発端

ものごとは、最初に考えたような展開にならない、というのはよくあることで。発端は楽な姿勢でテレビを見たり Tablet PC でブラウジングしたりするソファ(ではあったが老朽化して露出したバネを座布団で押えているシロモノ)では、見られるのは 14 インチ CRT テレビだったのだが、Tablet PC の外部出力をテレビに出せれば USB キーボード追加で楽な姿勢でテキスト打ったりできるかも、という考えだった。

機種選び

最初からテレビを置いていた場所なので、単体でもテレビとして使えるものを探した。まず引っかかってきたのが DELL の TV 機能つき 19 インチワイド液晶モニタ(26 インチは値段が高すぎ)だったけど、解像度が WXGA (1280 x 768) なので却下。

さらに少し探して、安いかも、と思ったのが Samsung SyncMaster 930MP。FAITH のオンラインショップで税込 59,799 円。他のメーカーの TV チューナー内蔵 19 インチ液晶モニタより 2 万円ほど安い(比率で言えば 4 分の 3 である)。パネルの種類がコントラスト比 1000:1、視野角 178 度の PVA パネルで、NANAO でも採用している(独自に機能追加はしているらしいが)ものであるということで、NANAO の値段からするとすごくコストパフォーマンスがよい気がしてきた。それにこの機種は入力端子が各種きっちりそろっていて、スピーカも 5W x 2 で普通よりマシ。というわけで発注。

FAITH には在庫があり、入金後すぐ発送されてきたが、到着したら思ったより大きかった。なにしろこれまでが 14 インチなので、同じ場所に入らない(棚なので上に余裕がない)。数分悩んだところで、机の上で「ながらテレビ」に使っている 14 インチの TV チューナーつき液晶モニタ(2000 年 Panasonic 製)をそっちに持っていって、新しいものは机に置くことにした。玉突き入れ替え、といったところ。

なんとなくデュアル

そうやって入れ替えてから「あれっ、コレってモニタをデュアルにできるじゃん」と気がついた。メイン機のビデオカードはこれまでメインで使ってきた液晶モニタの SONY SDM-M81(2001 年製品)の DVI 端子との相性で制限があり、Radeon VE というかなり非力なもの。デュアル機能はあるが「二画面が必ず同じ解像度」という制限があって、これまで机に並べていたのが SXGA と XGA だったのでデュアルにすると損、という状況だった。しかし、SXGA + SXGA ならいける。

ワクワクしながら SONY SDM-M81 と Samsung SyncMaster 930MP でデュアルモニタ実行。やっぱり広い。画像を並べて比較なんかするのにすごく便利。それに最近の Painter 9.1 パッチで、Painter でもパレット類をアプリケーションウィンドウの外に出すことができるようになった、それを活用することもできる。また、SyncMaster 930MP の PVA パネルは黒がしっかり黒く、色が鮮やか。これは Painter 絵よりデジタル写真でよくわかる。黒が締まっているのに、つぶれていると思っていた暗部の階調が前よりきちんと表示されている。これまでも SDM-M81 で不満はまったくなかったが、並べると色の鮮やかさの差は歴然。

なんかすごく贅沢な環境だなあ、と数時間はうっとりしていた(その間、あれこれ設定をカスタマイズしまくり。カスタマイズ項目多くてたいへん)。しかし、Painter その他のアプリケーションを使用して画像も扱っているわけで、モニタの機種が違うと色合わせがむずかしいことに気がついた。かなりいろいろやってみたのだが、液晶パネルの種類が違うと、色調整の原理みたいな部分ですでにズレているし、パソコンからの出力による調整(たとえば Adobe Gamma)では 2 画面がいっしょに調節されてしまって平行移動。

同機種デュアルへ

どないもならん、という結論に達したので、ついでにもう 1 台買って、SyncMaster 930MP でデュアルにすることにした。TV チューナー内蔵液晶モニタでデュアル、というのは、意図しない展開にでもならなければ考えない組み合わせだと思う。しかし、 2 台になると入力端子の数がこれまた贅沢なことになるし、スピーカも独立して 2 系統になるし、「ながら派」としてはかなり理想的な環境かも。この機種はスピーカーが下、横の枠は細めなので、デュアルにもわりと向いている。

同じリモコンが 2 台。ふつうに操作すると当然ながら両方のモニタが反応するので、通常テレビを「子画面」で表示する 2 つめ(向かって右、アナログ接続)のモニタにリモコンを使用することにして、メイン画面のモニタの正面下部には電磁波遮断シート(ハードディスクを買ったときに入っていた袋)でくるんだハガキを置いた。リモコン 1 台は新品のまま保存。

……というような経緯で、突然デュアル。Samsung SyncMaster 930MP はかなりよくできた機種だと思う。最初の電源投入で「地域選択」が必要だが、これは TV・ビデオ関係がグローバル対応だから。ほかの地域で使う予定はないが、なんとなくうれしい。コンポーネント入力と、PC 画面表示中の「子画面」でのテレビ表示も必須項目(重要な機能が抜けてる機種もけっこうあるなか、低価格で何でもできるのはありがたい)。

設定・機能詳細

最初につないだとき、色は白っぽく感じる。これは調節で普通になる。テレビ画面や AV 入力を全画面に拡大する機能がそれほど強力ではないので、テレビ放送を全画面で表示するとあまりきれいではない。が、Picture in Picture (子画面)だと拡大する必要がなく、液晶のコントラスト比と発色がよいのでかなりきれいに見える。テレビチューナーは自動でチューニングする機能があるが、手動でノイズリダクションをオンにしたり、微調整をかけたほうがよい場合が多そう。音声は Dolby Virtual あるいは BBE のどちらかをオンにする必要あり。子画面の画質もカスタマイズできる。要するに、いろいろとカスタマイズしないとじゅうぶん機能が引き出せない可能性が高い。

この PVA パネルは黒が漆黒で他の色も発色がよいが、欠点もある。視野角は縦・横とも 178 度ながら、中心軸から 45 度くらいを超えると全体が明るくなる性質がある(それ以上には白っぽくならないので、横からも見えるというのはウソではない)。これは TN パネルのように特定の色が変色するのではなく、ガンマ値が上がるのと同じ感じなので、階調の暗い部分を確認するのに使えなくもないが、色が変わらないほうがいいのは当然。また、反応も 25ms と現在の機種としては遅めなので、テキストなどを速くスクロールすると少し残像が出る。とはいえ PS2 の「グランツーリスモ 4」をやるくらいなら特に問題はないようだ。PVA パネルを拡大して見ると、普通は 1 ピクセルごとに I が横に 3 つ並んでいるところが、> が 3 つ並んだ状態になっている。

リモコンのボタンは、電源、チャンネル直接指定と FM ラジオ切替部分で 12 個、テレビのチャンネル順次切替と音量調節で 4 個、ソース(全画面で表示するもの)の選択、音声ミュート、オンスクリーン表示のメニュー操作用として上下左右キー、Enter のほかに 4 個、直接いろいろ変更するものが 12 個の計 40 個 (うち、日本では無意味なもの 2 個)。レイアウトはまずまず。DUAL/MTS(ステレオ・モノラル、あるいは二か国語の切替)と PIP SOURCE(子画面に表示する入力の切り替え)がリモコンでできて助かる。(できて当然だと思っていたが、できない機種もあるようなので。)

入力系統は、パソコンが DVI とアナログ(D-Sub 15pin)、パソコン音声、コンポーネント、S-ビデオ、ふつうの(コンポジット)ビデオ、左右音声、ヨーロッパ向け RGB 接続端子(SCART)、テレビアンテナ、FM ラジオアンテナ。出力はヘッドフォン端子 1 つ。

本体画面下、中央に電源ボタン(中央に電源 LED)があり、その周囲のリング型ボタンでも本体操作ができる。OSD(メニュー表示)がオフ(通常使用)のとき、左右で音量(ヘッドフォン接続時はヘッドフォン音量)、上下でテレビのチャンネル切替、メニュー表示オンのとき、メニュー項目の選択やサブ項目への移動、設定数値の増減。メニュー表示関連では、右下横面ボタン(6 個ある)のうち、MENU ボタンと ENTER ボタンを併用。

「画質設定」は系統別で記憶されている。本体横のボタンで画質トグルできるのは PC/DVI、PC/アナログ入力のみ。この他に TV、AV(コンポジット)、コンポーネント入力それぞれが独立。設定は 3 種類のプリセットとカスタム。「音質設定」は 3 種類のプリセットとカスタムだが、画面入力の種類にかかわらず共通。本体厚さ 58mm。重さ 5.9kg。額縁幅(左右) 27mm (全体幅 433mm)。本体外電圧変換ボックスあり。(電磁ノイズと熱の発生源としては、使用者と遠い場所にあるほうがよい、とこのごろは考えるのでこの仕様は歓迎。)

SyncMaster 930MP Dual

(2005/08/30 ― 画面写真と説明追加)

デュアルにして Picture in Picture の子画面を表示した状態。左は PS2 のコンポーネント入力、右は VHS ビデオの AV 入力。(クリックで少し拡大。)

作業場は天井のライトはふだんは使わず、バイオライト・ラクソのみによる照明で、ふだんはバイオライトも壁(本棚)方向を向けているので薄暗い。ディスプレイはメイン表示はコントラストも明るさも落とし、子画面は明るく(ふつうのテレビ画面程度に)している。

余談

Samsung ではすでに、PVA の応答速度を上げたものを展示会では発表ずみで、930MP が安くなっているのも、新しいパネルを搭載した TV チューナーつき液晶ディスプレイがわりとすぐ発売になるからなのかもしれない。さて、新機種はいつごろで、どんな値段になるのやら。この買物はよかったんでしょうかね。

とりあえず、PinP 機能があっても 1 台ではできなかった、ゲームとテレビを並べて表示、(両方、あるいは片方をパソコン画面の子画面とすることも可)ということができている。表示色の微調整は Adobe Gamma でうまくいっている感じ。Photoshop などをインストールずみで Adobe Gamma が入っている場合、付属の画面色設定ツールをインストールすると混乱のもとになると思われるので注意。

今回、このモニタのパネルってどんな評価なのか、と調べているうちに、すでに持っている機種についても素性がだいたい特定できた。SONY の SDM-M81 は視野角が広くて、PVA のように中間的な角度で少し変色することもなく、反応速度はあまり速くないので、どうも IPS という種類らしい。Tablet PC の hp tc1100 はパネルが LG 製であるという情報が出ている。また、発色の傾向が SDM-M81 に似ているのでこれも IPS 系のパネルということになる。他に持っている Panasonic Pronote CF-B5XR と Dual USB iBook は視野角狭いので TN ってやつらしい。ま、ノートだし。また、どっちもかなり古いので視野角狭いだけでなく発色も今時のノートより悪いです。

で、このテレビ兼用モニタ、開梱したときはスタンドが本体に並行に平らになっていて、そちらを上にハンドルとして持って歩くことができる。スタンドは開いたときにカチっと音がして、後ろに 20 度よりは倒れなくなるが、スタンドのボタンでまたたためる。ちょっと珍しい構造だが、収納時は非常に省スペース。3 年保証。

[ 2005/08/13 追記 ]

このうちのメイン機で、デュアルモニタが別の解像度に設定できないのは、ビデオカード問題ではなく、Windows 2000 の制限である、ということを知った。というわけで、Radeon VE みたいな古いビデオカードでも XP なら個別の解像度設定ができるのかも。Windows XP Professional が載っている Tablet PC の hp tc1100 は、ビデオチップも nVidia のもっと新しいものであるが、メインとサブの画面の配置や解像度が自由なのは XP だったかららしい。Windows 2000 を起動するたびに (c) 1995-1999 とか表示されてるので(SP4 を当てていても)、古いことは確か、ではあるが。

「SDM-M81」で検索して出てきた こんな ページに、この機種と NANAO の FlexScan L675 が並んで掲載されていたが、なんかスペック同じ。NANAO と「パネル同じ」なものを前回も今回も買ったのかな。前回は実機を見て(値段で)選んだ。今回は見てない。

パソコン画面をメインで表示しているとき(DVI、アナログとも)、PinP 機能で子画面が表示できて、ここにテレビやらコンポーネント入力の PS2 の画面を出すわけだが、メインの画面の画質と PinP の画質が独立した設定なのは、かなり便利かも。PS2 で DVD を見るとパソコンの CPU パワーは消費しないし、そこだけコントラストの強い明るい画面になってるのは考えてみればベスト。ついでに、全画面だとわずかに(30:31 程度)縦が長くなるコンポーネント入力も PinP だと縦横が正確な比率になるようだ(「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」DVD のネットインターフェイス円を画面上で定規で計測)。

PinP の不透明度が 4 段階で調節できるが、それって意味があるのかな、と最初は思ったけど、PinP の後ろのスペースまで、たとえば Painter や Photoshop のパレットを置くのに使いながらテレビ表示するのにはいいかもしれない。少しだけ透明にするだけでパレットなどはじゅうぶん使える。テキストエディタで文章を打つのも問題ない。デスクトップを濃いめの灰色にしておくか、IrfanView などでそういう画像を後ろに広げておくと PinP の色もおかしくならない。

[ 2005/09/23 追記 ]

リモコンで 1 とか 3 とかにチャンネルを切り替えると、2.5 秒くらいのタイムラグがある。基本の 12 チャンネルだけでなく UHF や BS、CS、CATV でのたくさんのチャンネルをテンキーで切り替えるためのリモコンなので、1 桁だけ入力した場合は次の桁の入力待機状態になるようだ。1 ではなく 01 と入力すれば待ち時間はない。

いっぽう、1 と入力したあとに他の操作をすると、チャンネル操作はそこでキャンセルされる。

[ 2005/10/28 追記 ]

液晶パネルの種類によって、色の出かたが多少違うのは当然ではある。今回の Samsung の PVA パネルの直前に使っていた SONY ブランド(製作メーカー不明)の IPS パネルと Tablet PC hp tc1100 のこれも IPS パネルの、このどちらも「紫がかった濃紺」がただの紺になってしまう傾向がある。はじめて CRT から IPS パネルの液晶に替えたときは、どうしてこの色が出ないのかと困惑して、いろいろ数値を変えてみたりしたが、同じ色が出なかった。が、以前に作っておいたウェブページの背景色を今回 PVA パネルで閲覧したら、これが CRT で設定したときの色。

青紫はディスプレイの種類と設定によって大きく印象が変わる色なので、注意が必要かも。

印象が変わってしまうのは、この色設定です。
背景色 #1d0066、文字色 #ccff66。

英語のレビューを読んでみると、そこでレビュー対象になっているものと、うちに届いたものでは、少し同梱物が違う。日本で売られているものは DVI ケーブルつき。

(Last Modified: 2005/10/28)

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